中国の「ネット・ガバナンス」  宇治敏彦

 「インターネット、市民社会、ガバナンス」をテーマに日中両国の学者たちが意見交換するシンポジウムが日本政治総合研究所(理事長は政治学者の白鳥令氏)の主催で3月18、19両日、東京・六本木の国際文化会館で開かれた。日中両国の政治関係は一昨年、当時の野田民主党政権が尖閣諸島の国有化を閣議決定して以来、極端に冷え込んでいる。しかし、いつまでも隣国同士がそっぽを向いた関係を続けるのは好ましくないと思う識者や民間団体が両国内で増えつつある。今回のシンポもその一環で、中国から中国共産党中央編訳局比較政治経済研究センター(Central Compilation & Translation Bureau)幹部や北京大学、清華大学などの学者8人が来日した。
 シンポで「中国におけるインターネット・ガバナンス(自己責任と公衆参加)」について報告した褚松燕・国家行政学院教授によると、2013年時点での中国におけるネット利用者は全人口の45.8%に当たる6億1800万人。中国での「ネット元年」は1994年とされるから過去20年で、まさにドッグイヤー(犬の寿命は人間の7倍の速さで進む)の速度で浸透したといえる(ちなみに日本でのネット元年は1995年で2013年のネット利用者は約8000万人)。
 「1994年当時は中国のネットは“技術型”だったが、1997年ごろから”商業型“になり、さらに現在は“意義型”に変わってきた。たとえば毎年11月11日は『独身の日』ということで、ネットを通じてのさまざまな独身向け商品販売が盛んで、この日一日だけでネット上で約350億元(日本円で約5600億円)の取り引きがある」
 「中国におけるネット・ガバナンスの問題点としては、いかに秩序と自由のバランスをとるかだ。Big brother is watching youという言葉があるように、何か悪事や不法な書き込みをしようとしても『兄貴が見ているぞ』という自己規制がどこまで働くかということ。2013年にはネット風評取締りキャンペーンの『浄網(網とはネットのこと)行動』が行われ、量刑も定められた。ネットは自浄作用を備えているか、という論争も盛んに行われてきた。『規制から統治へ』というのが現時点での中国のネット・ガバナンスの問題点だ」
 この女性研究者の発表は、なかなか示唆に富んだ話だった。ディスカスタントととしてコメントを求められた私は「国民の『知る権利』『発言の自由』『自主的規制』は、それを守る『民主的政治体制』が堅持されることによって初めて成り立つもので、その両面のバランスがとれているかどうかが現在の中国の問題点ではなかろうか」と指摘しておいた。
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