新年は「開き直り」か、「滅びの覚悟」か   宇治敏彦

 現役の政治記者時代は、元旦といえば首相公邸や自民党本部で開かれる年賀式に出席した後、担当している派閥の政治家の私邸を回るのが常であった。私は宏池会(旧池田派)担当が長かったせいで渋谷・松涛の前尾繁三郎宅とか、瀬田の大平正芳宅とか、経堂の鈴木善幸宅などを回ることが多かった。年賀の挨拶のかたわら、その政治家がどんな新年の抱負を語るか、訪れる政治家たちがどんな表情をしているかをそれとなく観察したり、情報交換することで、新しく幕を開けた1年の政局を占うのが習い性になっていた。村山富市首相は1996年(平成8年)1月5日に突然、退陣表明したが、後で振り返れば元旦の公邸における村山氏のあまりにも明るすぎる姿に予兆を感じさせる何かがあった。
 さて2012年、平成23年の日本は、どうなるだろうかと思っている人が多いに違いない。1年半近く前に初めて本格的な政権交代として民主党内閣ができたにもかかわらず、当初の新鮮さは全くなくなり、特に菅内閣になってからは「あの薬害エイズ問題で見せた菅さんのイメージはどこに残っているのか」と思うほどの失望感が広がっている。
 新年は小沢一郎氏を党外に追いやるのかどうかを含めて菅首相が「総辞職」か「解散」かのギリギリの判断を迫られる場面が出てくるだろう。春には注目の東京都知事選をはじめ統一地方選が行われる。中央政界も地方政界も新旧交代の年になるかもしれない。
 また歴史的にみると太平洋戦争開戦(1941年)から満70年だ。真珠湾攻撃で沸き立った当時の日本国内の空気を実感として記憶している人々は喜寿を過ぎている。開戦から敗戦に至る経過を改めて証言しておいてもらう残り時間も少なくなっている。ジャーナリストがやらねばならない仕事であろう。
 私の新年予測では、日本人が覚悟を問われる分岐点の年ではないか―ということだ。
当面の憂慮条件を列記してみよう。
1、大企業が労働コストの削減のため生産基地の海外移転や社内管理のアウトソーシングを進め
た結果、「国内産業の空洞化」が進み、雇用規模が縮小している(今春卒業予定の大学生の就
職内定率が57%にとどまっているのはデフレ不況、円高の影響と同時に産業構造の変化が見
逃せない。だから法人税を5%下げてもそんなに効果はない。むしろ産業構造変化対応策を進
めるべきだ)
2、携帯電話などのガラパゴス化に象徴される日本特有の技術発展と世界標準(グローバルスタ
ンダード)との開き拡大を早く是正しないと、「日本商品は技術的に優れているが、グロー
バルスタンダードでない」と外国から敬遠される。既にTPP(環太平洋戦略的経済提携協定)
でも「日本はずし」的傾向が出ている。菅内閣は早急に国内農業政策の未来図をつくらなくて
はならない。
3、国際競争力ランキング(2010年、国際経営開発研究所)はシンガポールが1位で、日本はタイ
の次の27位。日本のランクが年々下がっている理由に「経済状況」「政府の効率性」などが挙
げられている。
4、海外から日本に留学にくる外国人は増えている半面、日本から外国へ留学する人は年々減っ
ている。アメリカ留学は10年前の半分という状況だ。
5、国家の借金は882兆9235億円(2010年)。国民1人につき693万円になる。国家予算の収支バランスをとろうとしたら遠からず消費税率を10%以上に上げざるをえないだろうが、その前段として政府が無駄を省き、骨を削る努力が全然進んでいない。
 危険な兆候はまだまだ枚挙にいとまがないが、微温的な臨床療法では「ゆで蛙」のように日本がじわじわ滅び行くことは目に見えている。それでは日本人の智恵を結集して、新しい国づくりに踏み切る決断をし、そのメドがつくまで皆が所得に応じて一律に生活規模を縮小することが出来るだろうか。「滅びるか」「開き直るか」―その指揮を執るのは本来は内閣総理大臣であろう。菅さんにその覚悟を問いたい。
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