Kiss-FM KOBE と阪神・淡路大震災  小榑雅章

1995年2月28日朝日新聞朝刊声欄

3月4日の新聞を読んでいたら「ラジオ局合併 全面解禁」という記事があった。これまでテレビ局やラジオ局の合併や統合は原則認められなかったが、「経営難のラジオ局が破綻する例が出始めており、ラジオ局に限って規制を大幅に緩和する」(朝日新聞)というのである。記事を読み進めると「昨年には神戸市のFMラジオ局がFM局として初めて民事再生法を申し立てた…」という記述があった。
この神戸のFM局というのは、Kiss-FM KOBEであり、かつて筆者が在籍していた放送局である。この放送局が、兵庫県や神戸市、姫路市などの自治体や朝日、毎日、読売、日経、神戸、共同などのマスコミ各社を株主に華々しく開業したのは1990年2月であった。しかし、第三セクター経営の杜撰・放漫経営の結果、わずか4年で債務超過になってしまった。
公共の電波を使う放送局をつぶすわけにはいかない、なんとかしなければ、という兵庫県などから頼まれて、1993年になぜか畑違いの筆者が立て直し役になった。
その2年後の1995年1月17日、阪神・淡路大震災が神戸を襲った。
Kiss-FM KOBEの社屋は、神戸港の中突堤にある。ポートタワーのすぐそばだ。突堤の被害は大きかったが、建物は倒壊を免れ、放送も31秒の停波だけで、継続できた。
被災した社員も多く、交通手段も壊滅した中で、公共放送としてなんとしてでも被災者のために、リスナーのために頑張らなければ、と社員みんなが必死になった。
上に掲げたのは、震災後約40日を過ぎた2月28日に、朝日新聞の声欄に掲載された被災者の投稿である。
どうぞ、どうぞお読みください。
「一言の不満も言わず、ひたすら被災者にエールを送り続け、音楽も元気が出るようにと、思いを込めたリクエスト曲ばかり。…ひとり心細い生活を亀裂の入った住居で送っている私にとって、どれほどありがたかったことでしょう。…勇気と希望をありがとう。Kiss-FMは 世界に誇るラジオ局です」
この声欄を読むとき、思わず胸が熱くなり涙が溢れそうになる。あの時は苦しい毎日だった。しかし、市民のため、被災者のため何が一番必要なのかを考え、必死に送り続けたのを、リスナーはしっかり受け止めてくれていた。市民・リスナーと、放送局が一体になっていた。うれしかった。
「勇気と希望をありがとう。Kiss-FMは 世界に誇るラジオ局です」、企業として放送人として、これに勝る勲章はない。
その放送局が、事実上倒産し、やがて統廃合される運命になっている。たぶんKiss-FM KOBEの名前も消えていくのだろう。
ふだんは音楽を中心にした神戸のFM放送局が、阪神・淡路大震災の時にどんな働きをしたか、ラジオはこんなに役に立ったのか、ということをご記憶の片隅にでもにとどめていただけたら幸いです。
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本当に必要なもの

一昨日発生した東北地方太平洋沖地震。テレビのメディアは連日特番を組んで地震関連の最新情報を報道しているけど、視聴していて被災者の不安を煽っているように思えてならない。
今、本当に必要なのは、阪神淡路大震災のkiss FMのような被災者の不安を取り除いてくれる放送だと思います。
その放送局が今危機に直面しているというのは何とも皮肉なものです。
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