菅直人首相よ、「言霊」の重さに目を覚ませ  宇治敏彦

 東日本大震災に関連して、いま菅直人首相をはじめ政治家や各方面のリーダーにお願いしたいのは「もっと言葉遣いを考えてほしい」ということだ。4月13日の菅首相と松本健一内閣官房参与との間で「原発周辺には20年住めない」とのやり取りがあったという。会談直後に松本氏が、首相発言として記者団に紹介したものだが、後に「私の発言だった」と訂正した。原発の地元、福島県飯舘村の菅野典雄村長が住民への説明会を開いているときに、このニュースを聞いて「少しでも早く戻れるようにするのが政治家の仕事なのに、コレが政治家の言葉なのか。全く悲しくてならない。直ちに抗議する」と泣きながら訴えたという。首相自身は「私はそういうことは言っていない」と松本氏に電話して抗議した。しかし、時すでに遅し、だ。口から出た言霊は既に独り歩きしている。原発の風評被害で多くの人々がナーバスになっている時だからこそ、余計に言葉遣いには細心の注意を払わなくてはならない。
 4月14日に初会合を開いた東日本大震災復興構想会議の席で、議長に選ばれた五百旗頭真防衛大学長は、今回の大震災について「16年前の(阪神大震災の)被災がかわいく思えるほどの、すさまじい震災だ」と述べた。これもいかがなものか。東日本大震災の被害の大きさを強調するあまりの表現だろうが、そうかといって阪神大震災が「かわいく思える」とは。しかも彼は自ら阪神大震災の被災者である。家の地盤に亀裂が走り、25センチほど建物が移動したという。なんで素直に「阪神大震災のようなひどいことはもうあるまいと思っていたが、東日本大震災はそれを上回る悲惨だ」(4月15日、毎日新聞朝刊での五百旗頭氏のコメント)と言わなかったのか。阪神大震災の被災者から反発を招きかねない「かわいく思える」といった表現など使うべきではない。
 菅首相にしろ、五百旗頭議長にしろ、言霊の重みを自覚していない人々が、これからの復興構想を推進する立場にあることが心配だ。「言霊」は口から出るが、口がしゃべるのではない。心がしゃべるのだ。その意味では東京電力も同罪である。低レベルの放射能汚染水を漁業関係者や近隣諸国に十分事前連絡せずに海に放出したことにも共通している。原発と津波の二重被害にあった福島県南相馬市の桜井勝延市長は東電の対応について、地震発生から一週間以上も連絡がなく、11日後に初めて説明に来たときも事前連絡なしだったと怒っている。日本国内ですら、こうしたコミュニケーション不足、心遣い不足があるのだから、海を隔てた外国が日本の放射能トラブルに過剰反応するのも無理はない。いまこそ正確な情報を、的確な表現で国の内外に発信する責任が政府にも東電にもある。1000年以上も前に歌人・柿本人麻呂は「大和は言霊の国」と言った。その伝統こそ重んじてほしい。歌をつくるときは言葉を深く推敲するように、菅さん、発言する前に胸に手をあてて、まずは「いま何を、どういう言葉で発信すべきか」よく考えてもらいたい。
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