東日本大震災 「想定外」の「想定外」  宇治敏彦

 新聞の社説を書く関係もあって3.11大震災後、2ヶ月近く東京で発行されている日刊紙に掲載された専門家、識者の意見のほとんどに目を通した。そこで一番多かった表現は「想定外」だった。特に地震学者と原子力関係の専門家が今回の震災、津波、原発事故を「想定外」と表現しているのが目に付いた。そうでも表現しなければ自分たちの勉強不足、予見能力の低さ、学者や専門家としての見識不足に国民からの批判・非難が集中するのを恐れているかのようにも読めた。確かに東海地震、東南海地震、南海地震については「明日に発生してもおかしくない」といわれてきたし、専門家たちは震度7クラスの大地震、高さ10メートルの津波が来れば死者2万4000人を超す被害が出るだろうと予測していた。
 しかし皮肉なことに「想定外」の地域に「想定外」の規模の地震、津波が来襲した。日本列島は「地震列島」ともいわれるが、それにしてはGPS(地球観測システム)の海底観測が十分でなかったといわざるを得ない。想定が甘かったのは人工物(原子力発電所)の安全性に関しても同様である。こちらも専門家は「想定外」の事故としているが、「人災」の側面が強い分だけ電力会社、原子力専門家の責任も大きいものがある。
 こうした「想定外」のほかに予想外の「想定外」も起きるものだと知った。たとえば女性や子どもの性被害である。NPO法人「全国女性シェルターネット」の近藤恵子共同代表が新聞社の取材に明らかにしているところでは「内容は明かせないが、避難所でレイプ被害などが起きている」(4月7日、中日新聞夕刊)。実は阪神大震災や中越地震の際の避難所でもそういう問題が発生したそうだが、「こんなときに何を言うのか。加害者も被災者だ」と逆襲されて闇に葬られた例が少なくないのだとか。「米国では災害時に女性への暴力が増えたとの調査報告もある」そうだ。
 避難所になるケースが多い小学校の体育館でプライバシーを守るためダンボールやテントで仕切りが設けられている(その仕切りさえ出来ていない避難所もあるが)。それでも多くの目がある場所なのに、そういう所で性的暴力行為が行われるというのも「想定外」とはいえないのだ。人間が持つ悪魔性の一面を知って嫌悪感を覚える。車の「福島」ナンバーを駐車場に見ただけで「福島ナンバーお断り」の張り紙をする人もいる。単なる風評被害を超えて、日本人、いや人間一般が持ついやらしい性分が震災を機に顔を出す。これら「想定外」の「想定外」に関しても冷厳な事実として記憶し、きちんと対策を講じておかないと、また大きな社会問題が生じるに違いないと私は危惧している。
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