津波に襲われて  小榑雅章

 石巻港から旧北上川を1キロほど遡ったあたりの中州(中瀬)に、石ノ森章太郎萬画館があります。この萬画館は無事に外観を保っていますが、この中州にある他のほとんどの建物は外観をとどめぬほど津波になぎ倒されていました。
 その河畔から西に入ったすぐの商店街に、京屋という三階建ての呉服屋さんがあります。この京屋さんも地震と津波の被害を受けました。
 3月11日14時46分、大地震で大揺れに揺れた店内には家具や商品が散乱しました。そのとき店内には、79歳のご主人の奥村さんと奥さん、息子さんの3人がいたそうですが、建物はしっかりしていて大丈夫のようなので、一安心。片付けはじめて三十分ほどたったときに、津波だ、という叫び声がしました。と思ったら、裏側のガラス戸がバーンと壊れて、怒涛の津波が店内に流れ込んできたのでした。水量は、あっという間に胸までつかり、まだどんどん増えていきます。3人は、必死に鴨居にぶら下がり、それでも顔まで水が迫り、さらにその上の家具のでっぱりにしがみついていましたが、天井まではあとわずか、おぼれるのは時間の問題でした。意を決した息子さんは、水中にもぐってドアを探し、その向こうにあるはずの2階への階段を探しました。幸いなことに階段には非常用の電灯がついていたために在り処がわかり泳ぎ着くことが出来ました。息子さんは急いで取って返して、家具にしがみついているお母さんの腕をとって、強引に水中へ引きずり込みました。お母さんは泳げないが引っ張られるまま水中を潜り抜け、階段まで連れて行かれたのでした。「泥水を2回ほど飲みました。それで生き延びられたのですから」と笑っていました。同じように、ご主人も水中を潜り抜けて生き延びたのでした。
 この日、息子さんは女川へ出かける用事があったそうですが、急の来客があり、出かけるのが遅くなって自宅で地震に遭遇したのだそうです。もし、女川に向かっていたら、と思うと、人間の生死をわけるものは何か、考えてしまうと息子さんは話していました。
 石巻市では2964人もの方が亡くなり、今でも2770人の方々が行方不明だということです。

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