ASEANの記者は日本の震災をこう思っている(1)  宇治敏彦

 インドネシア、ラオス、マレーシア、タイ、ベトナムのジャーナリスト5人が日本新聞協会の招きで6月末に来日し、2週間の予定で日本を視察している。毎年1回、ASEANの記者を招いて記者研修を兼ね各国との相互理解を深めるというこの計画は今年で32回目になるが、同協会の国際委員長をしている私には今回、特別の思いがある。東日本大震災の影響でシンガポール、フィリピン両国が記者の派遣を見合わせたからだ。東電福島第1原子力発電所の事故で日本には放射能汚染が広がっているからとの判断だ。来日した記者の中にも家族から止められたが、自分はぜひ日本を見てみたいと説得して、この計画に参加したという記者もいた。6月29日、日比谷のプレスセンタービルでASEAN記者団と日本側国際委員との懇談会を2時間にわたって開催した。アジアのジャーナリストが震災後の日本をどうみているのかを記しておきたい。
 タイから来た「バンコク・ポスト」紙の女性記者カナナ・カッタランシポーンさんは、2004年、インド洋大津波がタイ南部を襲ったときと比較しながら、こんな感想を漏らした。「インド洋大津波の直後、私はプーケットへ何回も取材にいったが、タイの新聞は死者の写真をたくさん載せていた。今度、日本のテレビ、新聞を見て驚いたのは遺体の映像や写真がまったく出ていないことだった」。そのうえで彼女は「こうした節度はどこかの命令でなされているものですか」と尋ねた。私は新聞協会が2000年に改定した『新聞倫理綱領』に「品格と節度」として「公共的、文化的使命を果たすべき新聞は、いつでも、どこでも、だれもが、等しく読めるものでなければならない。記事、広告とも表現には品格を保つことが必要である」との一節があることを紹介すると同時に、「日本では日刊新聞の90%以上が宅配なので、子どもたちが目を通しても悪影響がないような新聞づくりを心掛けている」と説明した。カッタランシポーン記者は「タイ語の新聞は遺体の写真を載せることで災害の規模の大きさを読者に伝えようとしたが、日本の新聞はそうしないでも災害の深刻さを伝えた」と感想を述べていた。
 ベトナムから来た「ハノイラジオ・TV」のチーフ・プロューサー、ファン・ティ・キム・オアンさん(女性)は「ベトナムだけでグーグルに100万件近くの東日本大震災に関する検索があったが、それはいかに私たちが日本のことを気に掛けているかを示すものである」と報告した。彼女はその中でベトナム人が特に感銘を受けた話を披露した。被災地の9歳の男の子の話である。「飢えや次々にくる余震への恐れ、愛する家族を失った悲しみにさいなまれながら、彼はそれでも警察官から差し出された食べものを受け取ることを拒み、他の人に分けあうため救助隊に差し出した。大人ができないような行いをする親切で心優しい無欲の9歳の男の子は慈悲を分かち合い、無欲な犠牲の精神を教訓として示した」
 ASEANでも経済発展が遅れているラオスから来た「ビエンチャン・タイムズ」紙のカムポン・シーボンサイ記者は、こんなエピソードを披露した。「首都ビエンチャンから700キロ離れた南部セーコーン県に住む一家は2万キップ(2ドル)の寄付をラオス・ジャーナリスト協会に申し出た。これは彼らが出せる精一杯の額だった。このような貧しい家族からの寄付は、日本に対するラオス国民のあふれでる思いである」
 総じて日本および日本人に対して好意的な報告や発言が多かった。しかし、原発事故のこととなると話は違ってくる。それは次回に。
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