菅首相のストレステストとマスコミの責任 小榑雅章

菅首相が突然言い出したというストレステストの評判がよろしくない。野党も民主党の内部も非難ごうごうだ。マスコミの論調も同じで「なぜ菅首相は、今の時期に突然言い出したのか、そこが理解できない。行きあったりばったりで一貫性がなく、けしからん」ということのようだ。
中でも、九州電力玄海原発再開のための地元説得で「安全」を連呼していた海江田経済産業大臣は、後ろから味方に切り付けられた感じで、憤懣やりきれない形相である。マスコミも海江田大臣の立場になって、菅首相をなじっている。
だが、菅首相の言いだしたストレステストというのは、安全のためには本来やるべきテストではないのか。
NHKの解説によると、
「…ストレステストは、一般に製品の性能の限界以上に力や電流などを加えた場合に、どのような影響があるかを確認する試験で、今回、国が参考にするのは、EU=ヨーロッパ連合が、福島第一原発の事故を受けて導入したシミュレーションによる安全評価の手法です。原子力安全・保安院によりますと、EUのストレステストでは大地震や津波の規模を段階的に大きくした際に、原発の設備などがどこまで耐えられるのか限界を見極めるとともに、すべての電源や冷却機能が失われるという深刻な事態への対応策について具体的に評価します。これによって原発の設備の弱い部分を洗い出し安全性の向上につなげようというものです。…」http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110706/t10014028081000.html
これを読めば、突然であろうと急きょであろうと、遅ればせながらであろうと、やらなければならない手段である。これをやらずして停止中の原発を「安全」と言い切る根拠は何なのか。その方が不思議ではないか。
だいたい、海江田大臣の言い分では、玄海原発については原子力安全・保安院が安全性を確認したから、再開したい、ということだった。この時点で、新聞やテレビの記者たちは、「安全の確認というが、何をどのように確認したのか」という質問をしないのか。また、「原子力安全・保安院は、福島第一原発を安全だと保証してきた戦犯ではないか、その戦犯に安全を確認する資格も能力もなどないではないか」と問いただすべきではないのか。
この二つの質問さえ徹底的にしていれば、再開など出来るはずがないことは明白になるのに、それを怠って、「住民から不満が出そうです」という程度の反応しかできないマスコミのていたらくこそ責められてしかるべきだ。
それにくらべれば、非難ごうごうの菅さんのストレステスト導入の方がよほど建設的で、国民のためになる。マスコミに、菅さんをとやかく言える資格はないとさえ思う。
さらに言えば、このストレステストの存在を、なぜマスコミ側から持ち出さなかったのか不思議で仕方がない。
これほどの大事故を起こし、今後数十年も帰宅できない多くの人々に苦難を与えているにもかかわらず、安全の裏書をしてきたわが国の原子力安全委員会も原子力安全・保安院も、だれも責任をとっていない。そのまま居座っている。大事故の元凶であり戦犯である両委員会には、今後の原子力発電について発言できる能力も資格もない。その委員会が確認したと言ったら、マスコミは、それはおかしいと言うべきである。万一日本人が、お上の言うことだから仕方がないと従っても、世界が納得しないのではないか、と質問すべきである。そして、EUではストレステストをやっているが、日本はなぜやらないのか。EUがやるのに、巨大な被害を起こした本家の日本がやらないというのはおかしいではないか、と問いただすべきなのである。欧州に支局がたくさんあるマスコミが、まさかストレステストのことを知らなかったとしたら、こんな恥ずかしいことはない。もっとも知っていて質問をしなかったとしたら、これまたジャーナリストの資格がない。
機械の安全に対するリスクというのには、絶対はない。つまり絶対安全、ゼロ・リスクというのはないのである。そのためにいろいろテストを行って少しでもリスクを減らす努力をする。その上で99%安全なら一応安全と決めよう、いや99.99%でなければだめだという検討が行われて、規則としての安全が決められる。
原発のように際限のないような巨大な事故被害が発生するような装置は、リスクがどんなに小さくてもつくってはいけない領域である。しかし、人間の欲は、エネルギー確保という経済性を優先して、この領域を踏み越えてしまっている。
EUがすでに行っているストレステストは、過大なことではなく、せめてもの防衛手段である。
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