正確な津波報道が危機を招く恐れも  小榑雅章

今週の初め18日19日に、名古屋大学で日本社会心理学会が開催されました。筆者も参加しましたが、学会の最後に開かれたシンポジウム「東日本大震災を乗り越えるために:社会心理学からの提言」に話題提供者の一人として登壇した同志社大学の中谷内一也教授が、重要な注意喚起をしていました。それは「津波の『高さ』についてのリスク判断研究」という発表で、つぎのようなことです。
東北地方を襲った津波の高さは、初めは5メートルとか8メートルという報道が主で、それでも大変だと思っていたが、その後、調査が進むと、23メートルを越えたとか38メートルだった、などという巨大な大津波の数字がつぎつぎに報道された。
「大きな津波高さが何度も示されることで、『危険な津波』『避難すべき津波』の高さがかえって上昇してしまうのではないか。/日本人が津波の恐ろしさを再確認したことは間違いないし、リスク認知も高まったことは疑いないが、判断基準は災害が巨大すぎてかえってvulnerableになったのではないか。」
中谷内さんは、巨大な23mや38mを考えてしまうと、5mや8mは大したことないと判断してしまうのではないか、と危惧した。
そこで、東日本大震災の後に「どのくらいの津波予測で避難するか」という調査を行った。
じつは、大震災の起こる以前に同じ設問の調査を行っていたので、その両方の結果を比較してみた。
「どのくらいの津波予測で避難するか」
  1mかそれ以下で避難(震災前)約60%
           →(震災後)約38%に低下
  5m以上でないと避難しない
            (震災前)約60%
           →(震災後)約38%に低下
 「どれくらいの高さの津波を危険と思うか」
  1mかそれ以下で危険(震災前)約70%
           →(震災後)約45%に低下
  5m以上でないと危険でない
            (震災前)約4%
           →(震災後)約22%に増加
以上の結果でわかるように、「低い津波で十分危険であることを伝えるべきだ。木造家屋は1mでも半壊、2mで全壊する」このような認知が行きわたると、1mや2mの津波は大したことないという認識が行きわたり、非常に危険なことになりかねない。これは、「アンカリング・ヒューリスティック」という心理作用で、「たまたま目にした数値に『投錨』してしまうだけでなく、後の情報に基づく『調整』が不十分である」
「記録破りの指標を報じる際には、より低い値でも十分危険であることを合わせて伝えないと、後からの調整は困難」と、中谷内教授は、新聞やテレビなどの報道する側に、注意を喚起している。
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