「指導者はマーケット」という悲劇  宇治敏彦

 ヨーロッパの金融危機は、このあとどうなっていくだろう。秋に来日したフランスの人類・文明学者のエマニエル・トッド氏は青山学院大で開かれた講演会で「ユーロ体制は崩壊するだろう」と予言していたが・・・。11月下旬に日本新聞協会の招きでベルギー、フランス、オランダ、スウェーデンから4人のジャーナリストが来日した。さっそく懇談会の折に「ユーロ危機の今後をどう見ているか」を聞いてみた。「何が起こるか分からない恐怖感がある」(ベルギーの男性記者)、「指導者のリアクションが遅く、危機を追いかけて対策を取っている」(フランスの女性記者)、「ドイツとフランスの両国で決めたことに他国が従わなければならないというのが不満」(オランダの男性記者)、「スウェーデンはEU加盟国だが、ユーロ圏には加入せず通貨はクローナなので、気持ちのうえではまだ楽なところがある」(スウェーデンの男性記者)。それぞれの国の立場で見解も異なるが、最近の英字紙を見ていたら「メルコジ」(Merkozy)という造語も目に止まった。メルケル独首相とサルコジ仏大統領の2人で引っ張る「メルコジ」ルールに反発も目立つとの記事だ。
 フランスの女性記者が言った言葉が心に残った。「マーケット(市場)がすべて。マーケットが指導者になっている。政治家はパワーがないのです」。確かにユーロ危機が始まってからギリシャ、スペイン、イタリアと政治指導者の交代が続いている。政治指導者はマーケットに引っ張られて、いかんすべもない。果たして、それでいいのだろうか。いいはずがない。金融市場もユーロ圏も人間がつくり出したシステムだ。それが人間の制御不能になって、マーケット任せというのではヨーロッパの未来は暗い。
 ユーロ体制が崩壊すればリーマンショックを上回る激震が世界経済を揺るがすだろう。最近マルクス経済学が世界的に見直されているというが、少なくとも競争原理最優先で成長に突っ走る新自由主義経済が壁にぶち当たっているのは確かであろう。どうやって「マーケットが指導者」から「人間が指導者」の社会に戻せるか。それが今、世界的に大きな宿題になっている。
  
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