ソフトバンク孫正義社長とダイエー中内功社長  小榑雅章

経団連が先月11月11日に「エネルギー政策に関する第2次提言」をとりまとめた。原発の早期再稼働を要望し、再生可能エネルギー計画は慎重に定めるべきだとする内容で、会長・副会長会議では事前に了承されていた。定例理事会では異議なしで追認するはずだったが、ソフトバンクの孫正義社長が立ち上がって、「原子力発電所の早期再稼働について、安全・安心の検証がなされていないうちに再稼働を求めるのは遺憾」と発言した。
議長の米倉弘昌経団連会長は「提言は担当委員会で十分に議論した」と反論。原発再稼働については「安全性の確認が大前提と提言にも書いてある」と説明した。
理事会には約300人が出席していたが、他の誰からも異論は出ず、提言は承認された。
経団連の米倉会長は10日後の21日の記者会見でも、この孫社長の発言に触れ、「ああいう強行な、それもちゃんとした理屈ではなく単に反対だ反対だと。困った発言だなと思った」と重ねて苦言を呈した。
このやりとりをみて、思い出すことがある。
1980年6月、稲山嘉寛経団連会長(当時)が記者会見で「いま増えているのはスーパーなんかの第三次産業ばかり。これらの投資は消費を奪い合うための過剰投資であって国全体の利益にならない」と発言した。
これを知ったダイエーの中内功社長は、記者会見を開いて「スーパーみたいな第三次産業とはけしからん。時代の変化についていけない人が、経団連のトップにすわっているのは、まことに残念」と反論した。
失礼ながら、いまの日本経団連とはちがって、30年前の経団連会長は、財界総理と称されて絶対的存在だった。稲山さんは鉄は国家なりの新日本製鐵の会長でもあった。新興のスーパーごときは、すぐにスーと消えるような存在だと軽んじていたのである。
中内社長は、切歯扼腕、本当に悔しい思いをした。そして堂々と反論をした。これに対して、当時の新聞も世論も、中内さんはなかなかやるではないか、と好意的な雰囲気だった。スーパーは我々の生活に役に立っている産業だ、経団連の方がおかしい、という意見もあった。
さて、孫社長の発言である。誠に正論であり、よくぞ言ってくれたと思う。それに対し、300人も出席していた大会社の社長連中が、ただ一人として誰も同調しなかったというのは、どういうことなのだろう。
東電の原子力発電事故の原因さえいまだ明らかでなく、どれほどの被害・苦痛を国民に与えているかを考えれば、原発の早期再稼働など言いだせるはずがない。きっと多くの社長連中が、心の中では、孫社長の言う意見に賛同していただろう。筆者も何回も出席していたので分かっているが、理事会はすべての議案が異議なしで終わるのが通例である。だからあの雰囲気では手をあげられないな、というのはよくわからないでもない。孫社長への評価もいろいろあることも承知している。しかし、ことは重大である。大勢の空気に順応するだけでは、グローバルの企業活動はできないのは常識だ。どんな会議でも、異をとなえることの重要性は、企業経営者ならみな知っている。にもかかわらず、日本の大企業の社長会長が集る経団連理事会で、原発再開に全員が唯々諾々としたがったというのでは、日本企業の先行きは暗い。
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