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むのたけじ「希望は絶望のど真ん中に」 小榑雅章

むのたけじ

去年の11月に、岩波新書のこの本を知人から贈られた。そして、すぐに読んだ。読んで、いろいろなことが、頭の中をぐるぐると駆け巡った。いまでもまだ駆け巡っている。
むのたけじさんのお名前は、当然のことながら以前から存じ上げてはいる。しかし、知っていることと言えば、元朝日新聞記者で「たいまつ」の発行者という程度でしかない。著書は、今回、この本を読むのが初めてである。
何が、頭の中を駆け巡っているかと言えば、言い訳である。
むのさんが、日本人に、特にジャーナリストに対し、鋭く突きつけている根源的な問いかけに対し、何とか知らん顔ができないか、もっともらしい言い訳はないか、おろおろしながら、頭をかかえて2か月も過ぎてしまった。
むのさんは、大正4年、1915年生まれ、96才の現役のジャーナリストである。
1945年8月の敗戦の日、それまで戦争を推進してきた新聞記者の一人として、その責任を感じて、朝日新聞を辞した。
あの戦争に、結果的に協力した新聞人はたくさんいる。というより、ほとんど全部である。敗戦の報を知り、内心忸怩たる思いのジャーナリストは、少なくなかっただろう。しかし、戦争の実態に目をつぶり、戦意高揚の記事ばかり書き続けた責任を表明して、即日辞職した新聞記者は、むのたけじしかいなかった。
「八月一五日に新聞社を辞めた新聞社員は他に一人もいなかったそうで、それゆえに私の行動は新聞界で話の種の一つにはなったようだ。」と、むのは書いている。
むのさんは、96才のいま、なぜこの本を書くのか、こう言っている。
「目的は、この世のありさまを造り変えたいのだ。私たち人間みんなが人間らしく生き、喜べる世に造り変えたい。そのための根本の仕事は何か。この世から戦争を無くすことだ。…では、どうしたら戦争をなくせるか、戦争をなくすために、私たち人間は何をなすべきか。何をしてはならないか。…『反戦平和』と発声するだけのビラや行進や集会や決議を幾ら繰り返したって、それだけでは戦争勢力には立ち向かえない。」
そのためには、まず敵を知ることだ、と人間700万年前からの戦争の種々相を解き明かす。
そして言明する。「問題の本質をごまかしたり、すり替えたりしてはいけないよ。常に問題の本質と真正面から取り組んで、やるべきことをやり抜かないといけないよ、その努力を続ければ、きっと活路が拓ける」
ええっ、いまさら戦争論かよ、という声が、我が身の中からも聞こえる。
だが、むのは言う。国際連合の常任理事国5か国だけが、なぜ核爆弾の製造も貯蔵も許されるのか。おかしいではないか。「どこのどなたが、何を根拠に五か国にそんな許しを与えたのか。納得のいく説明を私は全くどこからも聞いたことがない」
私たちが、「そんなこと言ってもしょうがないじゃないか」「いまさら、そんなわかりきっていることをほじくりかえしても、どうにもならないよ」「子供じみたことをいうなよ」…そう言って、自分を納得させ、問題の本質に触れず、正面から取り組むことを避けてきた。
しかし、むのの言う「常に問題の本質と真正面から取り組め」とは、こういうことだ。その本質的なことを避けて、賢しらに、世故にたけたジャーナリストが、したり顔でのさばっている。
この言葉を、じつは私は何度も聞いている。花森安治から聞いている。賢しらに妥協するな、そんなことで本質が見えるのか、---どれほど花森に叱責されたことか。花森の根源も、ジャーナリストとしての戦争責任だった。人間性を根底から否定し暮しを破壊する戦争こそが、われわれの敵だ、庶民の敵だ、そんな戦争を起こさせないためには、守るべき暮しを作らなければならない。守るべき暮しがあれば、戦争なんて起らない。起こそうとしても抵抗する。それが暮しの手帖の原点だった。
しかし、その根源的な努力を、世故にたけたジャーナリストたちは、書生論だ、子供じみている、世の中はそうはいかんのだよと、さも分かったことを言い、目をそらし軽視する。
むのたけじと花森安治は、その取り組み方に於いてはいささか異なるが、「常に問題の本質と真正面から取り組め」という姿勢は同じだった。
むのさんのこの本を読んで、いつの間にか物わかりのいい、世故にたけた自分を見出し、首をすくめ、言い訳を考えている自分に、花森さんの叱声が響いている。
*むのたけじ著「希望は絶望のど真ん中に」岩波新書 700円+税  


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