神風が吹いた?  宇治敏彦

 最近会った著名な科学者が3・11東京電力福島第1原子力発電所の放射漏れ事故に関して「神風が吹いたんですよ。元寇のときのように」と言った。個人的な会話だったので、その人の名前はここでは公表を控えておくが、民間事故調査委員会にも関わっている専門家だけに「神風」という表現が気になって「どんな神風ですか?」と咄嗟に聞き返した。
 「昨年の3月11日、福島第1原発周辺は冬の西風が吹いていたのです。そのせいで放射能は海側に飛散していった。あれが逆に夏場のような東からの風だったら放射能被害は大変なものになっていたでしょうね」
 「もう一つの神風は大きな余震がなかったことです。アメリカから原発の専門家がやってきて一番心配していたのは4号機のプールに保管されている使用済み核燃料のことでした。大きな余震が発生してプールの水がなくなると使用済み燃料からもさまざまな放射能汚染が生じることを米側専門家は非常に心配していたようです。余震はたくさんあったが、大規模余震は来なかった。日本はやっぱり神国なのですかねえ」
 この科学者は、かねて「フェイルセーフ」ということを主張していた。原発は人造物だから必ず失敗や事故が生じるだろう。しかし失敗が発生しても、それが大被害をもたらさないところで食い止める措置を取っておく。放射能漏れが発生しても竜宮城ではないが、拡散しないで封じ込めるような装置を用意しておく。それが出来ていなかったことが福島原発事故の最大の教訓だと指摘していた。非常用電源が地震・津波で使用不能になってしまったこともフェイルセーフの哲学が十分確立されていなかったからというわけだ。
 その科学者が元寇(文永・弘安の役)を持ち出すのが私には意外だった。13世紀後半、2度にわたって日本は蒙古軍の襲撃を受けた。しかし壱岐、対馬を占領した元・高麗軍は博多に上陸したものの暴風によって敗退を余儀なくされた(文永の役)。弘安4年(1281年)再度来襲した10数万の元軍は、やはり大風雨に遭遇し全滅した(弘安の役)。3・11の被害は多方面にわたり、特に福島県南相馬や飯舘の人々はいまだ古里に帰れないでいる。「神風」が吹いただけでも、現在のような大被害なのに、もし吹かなかったとしたらどうだったのだろうと想像すると、背筋が凍る思いだ。
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