木曽岬干拓地を海にもどそう  小榑雅章

木曽川河口に広がっていた浅海干潟を農地にする目的で干拓した、木曽岬干拓地という土地がある。443ヘクタールというから東京ドーム(4.7ha)の約94コ分の広大な土地である。
干拓に当っては、この海を漁場にしていた漁師たちの猛烈な反対もあって、国が干拓事業に着工したのは1970年であり、完成したのは1988年だった。この時にはすでに、農業用地の需要はなくなり、何の役にも立たない、無駄遣いの広大な原っぱが残った。
工場用地として利用するには、まだ3mから6mもの土地のかさ上げが必要であり、巨額の費用を要する。さらに、船舶の着岸港の造成には不向きであり、東海地震の恐れを考えると、工場用地としての可能性は全くない。使い道のない典型的な無為無策無駄遣いの干拓地は、誰も責任を取らず、今日、ただ荒れるがままに放置されている。
そこへ、東日本大震災が起こり、原発事故が発生。自然エネルギーが叫ばれるようになった。国からこの干拓地を購入した三重県は、この干拓地にメガソーラの企業誘致を図っているという。使い道に苦慮していた県にとって渡りに舟のアイディアだったろう。
しかし、本当に、そんな単純な政策でいいのですか、と疑問を呈している専門家がいる。
「海の博物館」館長の石原義剛さんだ。
石原さんは、次のように主張している。
「…干拓にされる以前のこの地は、豊饒な浅い河口海であり、ハマグリ、アサリ、シジミを産していた。・・・
 県が購入を決めた後、わたしはこの地の『海拓』を提案した。海に戻そうという提案である。干拓地を囲む防波堤を一部破却して、埋立られた薄い土を少し剥がせば以前の干潟面が現れる。そこに海水を導入すれば間もなく昔の干潟はハマグリやシジミを産むようになる。僅かに睦部を残して森を作り、子どもたちの自然観察施設や学習施設を、それも干拓地から生産される漁獲物の販売代金で整備運営すればいい。また、この干潟に藻場を造成して、伊勢湾に魚類を蘇らせる稚魚の成育場にすればいい。漁師さんたちに働く場も提供できることは間違いない。
 わたしは単に、『海拓』で漁師だけの漁場を回復させればいいと言っているのではない。子どもたちが海の環境を体験する場にし、県民が誰でも潮干狩りをし、漁師さんとの交流の機会をつくり、海を楽しむ場所づくりが出来ればいいと思う。
 干拓地は長く放置されていたので野ネズミなどの棲みかになり、これを餌とするチユウヒ(タカの一種)も住み着くようになっているが、『海拓』が進めば、水辺の動植物群が還り、豊かな自然環境が回復するから、今以上に多種な野鳥の飛来は間違いない。
 木曽岬干拓にメガソーラを、という考えがどこから発想されたのか、この発想には疑問がある。この発想には県民を納得させるどんなメッセージが込められているのか知りたい。それとも単に遊んでいる土地だから使おう、少しでも金銭的に利益を生めばいい、というだけかしら。それだけなら余りにもお粗末な発想だ。と云うよりも悲しい発想だ。
 新しい三重県を開いてくれるだろうと期待して日本一若い知事さんを選んだ県民の希望に、知事はどう応えてくれるのだろうか。」(SOS海と人間No.198)
 豊饒の海を、人間の欲と浅知恵でもてあそび、散々荒廃させてしまった。自然の「海よ、すまない、ごめんなさい。元の自然の姿に戻しますよ」という素直な発想が石原さんの考えだ。
メガソーラを設置するのには、また莫大な資金が投入されなければならないだろう。またぞろ、浅知恵で時流に飛びつき、莫大な費用をつぎ込む。そのあげく、どうにもならなくなり、誰も責任はとらない。そんなこと、もうやめましょうや。
石原さんの、素直なまっとうな発想が、一番いい。海にも人間にも子どもたちにも一番いい。大賛成だ。金もかからない。私たちに必要なのは、かけがえのない豊かな海なのだ。

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