ジャーナリストの責任とは  宇治敏彦

 (この原稿は「沖縄文化通信」に依頼されて書いた原稿ですが、同紙は会員にしか配布されないので、「埴輪」にも転載します)

日本新聞協会の国際委員長を務めている関係で6月にはトリニダード・トバゴ、5月には中国と海外出張が続いた。カリブ海に面した島、トリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで開催された国際新聞編集者協会(IPI)の年次総会には世界57か国・地域から約220人の新聞、放送、通信などメディア関係者が集まり「課題に直面する世界とメディア・360度の視点」をテーマに3日間、活発な論議を繰り広げた。
 IPI(本部はウイーン)は1951年に設立され、120を超す国々の編集者が報道の自由確保を目的に活動している。年次総会の冒頭では「デス・ウオッチ」と称して、取材などで犠牲になった記者を追悼するのが恒例行事だ。今年は半年間で死者72人に達し、15年前に記録を取り始めてから最悪の年になりそうだとアリソン・マッケンジー事務局長が報告した。メキシコで麻薬密売を取材した記者が6人殺されるなど中南米でもジャーナリストの犠牲が目立つ。トリニダード開催はそれに抗議する意味合いも含まれていた。平和で自由に取材できる日本の環境に感謝すると同時に、他人事ではない「取材・報道の自由」拡大へのさらなる努力の必要性を痛感した。
 分科会の一つとして「自然災害とプレスの自由」が論議され、東京新聞の引野肇編集委員(日本科学技術ジャーナリスト会議事務局長)がパネリストとして登場した。同記者はフランスに本拠地を置く「国境なき記者団」が世界の「報道の自由ランキング」(2011年)で日本を11位から22位に引き下げたことを取り上げた。「外国人は日本のメディアが福島第一原発事故などの報道で政府による報道規制を受けたのではないかとの疑念を持っているようだ。だが、各新聞社独自の視点で報道しており、政府の統制を受けている事実はない」と引野記者は強調した。
 一方、IPIに先立って北京で開かれた日中韓セミナーでも「災害報道」がテーマの一つになった。4年前の中国四川大地震、昨年の東日本大震災で両国の記者がそれぞれ被災現場を取材し、国境の壁を超えて助け合い、励まし合う被災者や支援者の姿を記事にしたことで読者からは「ヒューマニズムに感動した」との反響が大きかったなどの報告がなされた。また普段から韓国の釜山日報と記者交換を実施している西日本新聞では、両国の記者が書いたルポやコラムによって風評被害の拡大を防ぐことが出来たとの指摘もあった。
日中間では尖閣諸島問題、中韓間では中国漁船の韓国領海内での操業問題、日韓間では竹島問題など衝突の火種は枚挙にいとまない。だがナショナリズムをあおるよりヒューマニズムの実例を報道することで、各国間の関係改善が促進されるのではないか。そんな印象を強く感じたセミナーであった。
2年後には韓国で第4回セミナーが開催されるが、相互に国民感情を良くしていく役割と責任をマスコミは担っているともいえよう。
インターネットの普及に伴い、新聞、雑誌など既成の活字メディアは経営面で苦戦している。そのためソシアルメディアと呼ばれる電子メディアとの共存共栄が当面、最大の課題になっている。電子メディアには速報性などのメリットがある半面、正確さなどではまだまだ日刊新聞が優位に立っている。筆者は今回、IPI理事に選任された。報道の自由の確保・拡大と同時に、いかにソシアルメディアと共存し「速く、正しく、有益な」報道を行うか。ジャーナリストとして責任の重さを感じている。
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