世間は狭きもの2話   宇治敏彦

 「世間は狭きもの。どこかで繋がっている」と実感した話を2つ。
 (その1)東京・内幸町にある勤務先の近くに抹茶も呑ませる喫茶店があって、数年前から通っていた。年配の女性が一人で切り盛りする地下のティールーム。そのママさんは京都の出身ということで、行くたびに京都の話をしてくれた。勉強熱心な人で、平家物語を読んでは「魚龍爵馬」とか「帝厥仙洞」はどういう意味かと聞いてくる。浅学な小生は、その度に宿題として預かって、次回行くときに回答を持参するという具合だった。あるとき別れたご亭主が映画の松竹に勤務していたというので、わが大学時代の友にも松竹助監督をしていた今関健一という男がいますが、というと「よく知っている」との話。それならと筆者はさっそく畏友・今関兄に連絡をとった。今関氏は喫茶店に連絡してくれたようで「シゲちゃんの奥さん」だと、こんな手紙をくれた。「シゲちゃんは(松竹で)有能な美術(担当)で、出が京都の時代劇であり、重宝がられたので、器用な才が災いとなったか、撮影所が斜陽化するにつれ美術部門を任され----最後は置いてきぼり食って、つらい思いをしたと噂に聞きました。奥さんも一緒に苦労したと想像しており、よくぞ内幸町で喫茶店をというのが小生の感想です」と。
 ところが昨年末で店を閉めてしまった。彼女の実家はIという京都で100年以上の歴史を持つ京かまぼこ屋で、兄さんが当主といっていたが、何かの事情で実家に戻れないらしい。喫茶店の入った建物が取り壊しになる関係もあったらしい。別れたご亭主はがんで入院していたが、最後を看取ることができたようだと人伝に聞いた。鎌倉に独り住まいのようであったが、どうしていることか。
 (その2)小生は調布市から渋谷区に転居して10年になるが、ホームドクターのように診ていただいていた調布の池田医院が遠くなったので、済生会渋谷診療所の松岡健平先生に血圧などを定期的に検診してもらっている。今年1月、定期健診に行ったときのこと。帰り際に顔見知りの看護婦さんが「宇治さん、宇野さんの個展パーティーに行かれていたでしょう」という。「えっ」と驚いたが、確かに昨年12月初め、麻布で開かれた漫画家、ウノ(宇野)・カマキリ氏の個展パーティーに先輩と出席した。カマキリさんには長年、東京新聞に一枚漫画を描いてもらっているからだ。彼の気さくな人柄を反映して作家の石川好(酒田市美術館長)さんなど多彩な顔ぶれが出ていたが、済生会の看護婦さんまでは気づかなかった。「どういうお友達ですか」と聞くと、笑いながら「呑み友達」との答え。どこで、どう回線がつながっているのか。世間は広いようで狭いものですね。



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