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未年における3つの懸念材料  宇治敏彦

 2015年は未年です。羊はおとなしい性格の動物というイメージから平穏な一年になれば幸いですが、内外に多くの懸念材料を抱えて「波高し」の年になりそうです。
 第1の懸念材料は、従来の常識が通用しなくなった日本経済の先行きです。たとえば「円安」です。これまでは「円安が進めば輸出が増え輸出関連企業を中心に儲かる」というのが常識でした。ところがグローバル化経済の結果として工場が既に海外に出ているので、円安だからといって為替差益で儲かる時代ではなくなったのです。むしろ中小企業が存立をかけて「うちも海外進出しなければなるまい」と検討し始めています。
 黒田日銀総裁は依然「円安は景気に対してプラス方向に働く」との認識を会見でも示していましたが、アベノミックス効果に陰りが出たと判断して11月初め追加の金融緩和に踏み切りました。輸入が輸出を上回る貿易収支赤字が2011年度から3年連続で増え、特に2013年度は11兆4745億円の赤字と記録を更新しました。
 あのソニーが今年は無配でした。あのダイエーの名前が間もなく消えようとしています。輸出関連に限らず多くの企業は20世紀までの経済常識が通じなくなった昨今、社運を賭けて闘っています。経済部長時代に取材した盛田昭夫(ソニー)、中内功(ダイエー)両氏らの元気な顔が浮かんできて複雑な気持ちです。
 円安問題だけではありません。日銀の調査でも、現在の暮らし向きが1年前に比べ「ゆとりがなくなってきた」と感じる層が全体の約半分と安倍政権発足以前の水準に戻っています。
 第2の懸念材料は地方の疲弊が加速していることです。「地方創生国会」。安倍首相は2014年秋の臨時国会をそう位置づけ、所信表明演説で「この国会に求められているのは若者が将来に夢や希望を持てる地方の創生に向けて力強いスタートを切ることです」と強調しました。その一例として首相は隠岐の海に浮かぶ島根県海士町で「サザエカレー」を年間2万食も売れる商品に育て上げた若者たちのことを紹介しました。もちろん、こうした若者の心意気を奨励するのは大賛成です。しかし、私たちは過去の「地方活性化」策がことごとく失敗してきたことを忘れてはなりません。代表例は1972年の田中角栄内閣における「日本列島改造計画」でした。全国に新幹線網を張り巡らす一方、人口25人規模の地方都市を育てて過密・過疎問題の同時解決を図ろうとしたのです。着想は良かったのですが、折からの石油ショックによる狂乱物価と重なって、地価高騰が加速しました。結果は東京、大阪、名古屋の3大都市圏だけが発展し、過疎の解決には結びつきませんでした。特にグローバル化対応策として大阪、名古屋に本社を置いていた会社が本社を東京に一極集中化させたことで、東京だけが巨大都市に発展し、ほかは「消滅可能都市」などという芳しくない名前をかぶせられる都市が増えたのです。竹下登首相時代には地方再生という名目で全地方自治体に各1億円が現金で配布されました。それぞれの自治体がアイデアを出して有効に使いなさいということですが、私は講演に行った自治体庁舎の玄関で、職員から「これが竹下さんの1億円でつくった神輿です」と金箔の神輿を見せられた時には声が出ませんでした。住民は金(きん)の御輿のために血税を払ったとは思えなかったからです。
 安倍政権下での地方創生策がこうした過去の地方再生を繰り返さないよう願うばかりです。しかも環境は田中、竹下内閣当時よりはるかに厳しくなっています。総人口の「1億人切れ」が視野に入ってきたけに、国も自治体も「人口減を前提にしての地方創生策」という狭い道を進まなくてはなりません。ましてや過密と過疎の同時解決という方向までは、とても手が伸ばせないでしょう。石破茂地方創生国家戦略相がどんな知恵と実行力を見せるか注目です。
 第3の懸念材料は、日本を取り巻く国際情勢が厳しく、日本の立居振舞が困難さを増していることです。前回の未年、2003年(平成15年)にはイラク戦争が始まり、当時の小泉純一郎内閣はイラク復興支援特別措置法を成立させ、「非戦闘地域」というカッコ付ながら自衛隊員の海外派遣への道を開きました。その前の未年、1991年(平成3年)には湾岸戦争が勃発し、海部俊樹内閣は自衛隊をペルシャ湾へ掃海作業のため派遣しました。また次の宮沢喜一内閣は国連平和維持活動(PKO)協力法案を国会に提出しました(翌年成立)
 さらにその前の未年、1979年(昭和54年)には第2次石油危機、イラン米大使館人質事件、ソ連(当時)のアフガニスタン侵攻があり、時の大平正芳首相は対米全面支援を明確にし、モスクワ五輪をボイコットしました。
 こうしてみると未年は結構、激動しており、日本が軍事的行動ないしはそれに類する行為を迫られる国際情勢となっています。では2015年の未年はどうでしょうか。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の攻勢がどこまで拡大するか、まずはそこがポイントです。特にイラクやシリアに隣接するトルコの出方が注目されます。筆者はIPI(国際新聞編集者協会)理事会出席のため2014年秋、イスタンブールに1週間滞在し、新聞社、放送局を6社訪問しました。首相から大統領に転じたばかりのエルドアン氏の評判は芳しくありませんでした。有力紙幹部は「利益供与をエサにマスコミの口封じをしている」と批判していました。同大統領は若い頃イスラム教指導者の養成学校に通ったこともあり、イスラム原理主義に理解を持っているとされます。しかし英米仏の男性たちを公開処刑するなど過激な行動をとる過激派「イスラム国」にトルコも手を焼いており、米国の協力が得られればシリア国内の過激派との地上戦も辞さずとの姿勢です。日本でも北海道大学の学生が「イスラム国」に参加しようとして警視庁に事情聴取を受けたように、世界80国以上から戦闘員として1万5000人以上の若者が参加しています。戦後70年を迎える日本は近隣国との関係改善と同時にテロ対策にも万善を期さなければなりません。
(この原稿は「行政&情報システム」12月号に書いたものを少し手直ししたものです)
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