好きな言葉②「先用後利」   宇治敏彦

 ご存じ富山の薬売りのキャッチフレーズ。昨年5月、黒部ダムを見学した後、富山市民民俗村にある売薬資料館で300年以上の歴史を持つ富山売薬の歴史を勉強した。富山の薬売りたちは「懸場帳」という全国のお得意様名簿をもとに春と秋の2回、手分けして薬を担いで家々を訪問し、使った薬の補てんをしていった。「先用後利」とは、まず薬を置いて行き、利用者に役立ててもらう。代金は使った後で結構ですという考え方だ。
先用後利b
 富山の薬売りが栄えた江戸時代は「反魂丹」という万能薬が有名だったようで、彼らが必ず持参した薬品の一つだったのだろう。紙風船とか折り紙など子供が喜ぶ景品も薬ととともに持参してサービスとして無料配布していたようだ。
普通の商売は品物と代金を同時に引き換えるものだが、「まずお役に立てください」と薬を先に置いていく心持ちが嬉しいではないか。
 現代は世知辛い世の中になったもので息子を装った電話をかけては巨額な預金を引き出させる「俺々詐欺」事件が毎日のように報道されている。いつの時代にも詐欺師や悪人はいるものだが、貧富の格差が広がったり、明日に希望が持てない状況が強まれば、悪事を働く人間も増えていく。こんな時代状況だからこそ「お先にどうぞ。お代は後で」という「先用後利」の精神が必要だし、そうした考えを何事にも広げていくことで世直しにもつなげられるのではないかと思う。
 富山県で製薬事業が栄えた時には包装業、木工業、運輸業など関連企業も栄えるなど薬を中心にしてすそ野が広がっていった。それは同時に「先用後利」精神の広がりにもつながっていった。いまでも日本国内で住み良い都道府県の上位に富山県がランクされるのは、住居面積の広さ、魚介類や野菜が豊富などの理由のほかに「先用後利」の思いが一般市民の間に残っているからではないか、と筆者は想像している。
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