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暮しの手帖はなぜ広告を載せないのか――広告をやめさせろという言論統制発言について  小榑雅章

先月6月26日に自民党の勉強会で、報道機関に広告主を通じて圧力をかけるべきだとの議論が噴出したという。
翌27日の新聞各紙は一斉に警告の論説を掲載している。
たとえば、毎日新聞の社説は、
・・・危うい風潮である。安倍晋三首相に近い自民党若手議員の会合で、今国会で審議中の安全保障法制をめぐり、報道機関に広告主を通じて圧力をかけるべきだとの議論が噴出した。講師として出席した作家は沖縄の新聞2紙について「つぶさないといけない」と発言した。
  民主主義の根幹をなす言論の自由を否定しかねない言動が政権与党の会合で出たことに驚く。非公式な議論という説明では済まされない。一連の発言内容は不適切だという認識を首相はより明確に示すべきだ。
  問題の発言は自民党議員による勉強会「文化芸術懇話会」で、NHK経営委員も務めた作家の百田尚樹氏との質疑の際に出た。安保法制の国民理解が広がらないことと報道の関連をめぐり、出席議員の一人は「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」と発言したという。報道機関をどうかつし、政権批判を封じようというのでは言論統制に等しい発想である。・・・(以下略)

新聞もテレビも雑誌も、どれもマスコミの収入源の多くは広告である。
新聞の販売収入は約6割で、約25%近くが広告収入だ(新聞協会)。とくにテレビの収入源は、ほとんどが広告である。まさに、広告は生命線。広告という糧道を絶たれたらテレビは絶対に生きてはいけないし、新聞も経営が行きづまるだろう。
自分たちに異を唱えるマスコミは広告をやめさせて、困らせなければならないと自民党の議員が考えるのも不思議ではない。
 *****************

ところで、暮しの手帖という雑誌がある。
花森安治編集長のもと、発行部数100万部の生活雑誌として戦後の世論形成に大きな影響力を持っていた。とくに商品テストが特色で、電気冷蔵庫や電気洗濯機などの性能検査のテストをして、買うべき商品ではないなどと遠慮なく評価を発表していた。
その暮しの手帖には、広告がない。タダで配る同人雑誌ではない。広告がなければ経営できないはずの営業雑誌なのに広告がないのである。
なぜか。なぜなのか。
暮しの手帖の編集部員だった筆者は、編集長の花森さんから真顔で「暮しの手帖はなぜ広告を取らないのか」と糺されたことがある。1960年、安保騒動の真っ最中で連日国会議事堂の周りを数万ものデモ隊が押し寄せていた時だ。
筆者は、「商品テストをするためには、東芝や日立やナショナルの広告をもらっていたら、中立の評価が出来ないし、広告をもらっているから手加減をしているのだと読者からも信用してもらえないので、広告をとらないのです」と教科書的な返事をした。きっと優等生の得意顔だったのだろう。
「その通りだ。だれでもそう思う建前だ」と言ってから、顔をあらためて、「でもな、われわれの相手は商品テストのメーカーや企業だけではない。本当の相手は、権力だ。政府だ。自分たちに異論を唱え、反対するジャーナリズムは、必ず潰しに来る。広告で経営していれば、必ず広告を出さないように企業に圧力をかける。それが権力だ。権力に抗しようとすれば、権力に隙をみせてはならない。いま新聞もテレビも、安保改定反対を叫んでいるが、本当の土壇場になっても踏ん張って権力に逆らえると思うか。広告を止めると言われても、本当に主張を曲げないか。
暮しの手帖は最後の最後まで、主張を曲げない。その時は全頁をあげて主張すべきを主張する。そのために広告を取らないのだ。胸にしまっておけ」
花森さんは、権力を信頼しない。国民は、権力にどれほど騙され、ひどい目にあったことか。そしてその片棒をどれだけ新聞や雑誌が片棒を担いできたことか。
ジャーナリズムが広告を止めると脅かされて腰抜けになり、いつまた権力におもねるかわからない。
だが、万一そうなっても、暮しの手帖だけは最後の最後まで全力で戦えるために、広告を取らないのだ。

7月4日の毎日新聞の社説の末尾は、
・・・首相は「言論の自由、報道の自由は、民主主義の根幹をなす。これは一貫した安倍政権、自民党の姿勢であり、その姿勢が疑われるような発言があったことは誠に遺憾だ。今後とも、こうした疑いをもたれることのないよう、しっかりと襟を正していきたい」と述べている。
 この言葉を忘れないでほしい。・・・

「この言葉を忘れないでほしい」と、安倍首相にくぎを刺しているのも、常套句ながら結びとして適切なのだろうか。
 しかし、なんと能天気な甘々の結び。
「この言葉を忘れないでほしい」と言ったら、守ってくれるほど、権力は甘くない。
権力は、勝手に忘れるのだから。いくらでも臆面もなく前言を翻すのだから。
それを骨身にしみるほど味わってきたから、暮しの手帖は広告を取らないのだ。
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