自殺・死体・遺骨の映像が訴えること  宇治敏彦

 新聞もテレビも日本のマスコミは、人の死や殺人行為を報道しても死体(遺体)の写真・映像を新聞紙面やテレビ画面に原則として出さないというのが慣例になっている。読者や視聴者が嫌悪感・不快感を覚えるし、被害者家族などにとっては耐えられないケースも多いからだ。
 東日本大震災の直後に東南アジアからやってきたジャーナリストたちが「わが国では台風被害の大きさを報道するために遺体の写真を新聞に掲載するケースもある。日本ではそうした写真を避けながら被害の実態を報道する姿勢に感心した」との感想を述べていたことを思い出す。
 だが戦後70年の特集番組で、NHKをはじめテレビ映像に当時の米軍などが撮影した戦死者の映像や死骸写真が、このところ頻繁にテレビ画面に映し出される。なかでも筆者が一番ショックを受けたのは昭和20年春のサイパン島や沖縄決戦の際に米軍が撮影した母子自殺の映像だった。母親が断崖絶壁から幼児を海に向かって投げ捨てる。海中に沈んだわが子を見届けた後、今度は母親自身も断崖から身を翻す。カメラマンの目は、海に漂う幼児の死体を容赦なく写していく。私は言葉をなくした。
 そのほかにも日米双方の兵士の死体、さらには遺体に向かっても攻撃を続ける米軍兵の姿や、岸辺に無造作に並ぶ死体の山など、正視するのが苦痛な映像が続く。
 同年8月6日、広島に原爆が投下された直後の写真も痛々しい。日本人が撮影したもので、米側に没収されて写真の中には、皮膚がはがれ、髪の毛がチリジリに焦げた子供の姿もあった。
 さる8月8日夜、放映された「特攻作戦」(NHKテレビ)特集では、特攻の成果が虚偽報告(米側記録では米艦船の特攻による破損は58艦に対して日本側記録では228艦)され、嘘の上塗りが重ねられていった。その理由の一つに「一撃講和」(何か米側に被害を与えて、それをきっかけに終戦に持ち込む)という考えがあったと当時の軍関係者が証言している。しかし、沖縄では全員が特攻になって、結果的に特攻攻撃での死者は4500人以上に達した。直接の死体映像ではないが、米側撮影のフィルムで日本側の特攻機が次々に上空で撃ち落とされ、機体がバラバラになって海中に没していく様は、まさに若き日本兵の死を見るに等しい。
 普段の報道では目にしない、また見たくもない、これらの映像を見て思うことは、戦争の悲惨さと同時に、「人間尊重」と相反する日本の戦前教育の大罪である。
 「日本兵は勝ち目がなくなると、最後の手りゅう弾を敵に投げるのではなく、自分の胸にたたきつけて自決した。そんな遺体が散らばっていた。全滅ではなく玉砕。他の国ではあり得ない光景だった」(8月9日、東京新聞朝刊)。戦時中、米海軍通訳士官だったドナルド・キーン氏は、こう書いたうえで、「日露戦争当時は多くの日本兵が捕虜になった記録が残っている」「それが太平洋戦争時には一変していた」と分析している。
 その原因は、どこにあったのか。それを突き止めることが政治家やジャーナリスト、ひいては日本人全体の責任ではないだろうか。
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いわゆる戦争を知らない世代です。戦後70年ということで最近の報道をみて・・戦後の日本の教育も改めて考え直さないといけないと強く感じています。戦地となった地で亡くなっていったたくさんの非戦闘員を含む方の命と無念さについて考えさせられます。同時に私の育ってきた時代の戦争報道はドラマなども含めて,あまりにも敗戦国=被害者側にたったものが多いように思われます。戦争を始めたのは誰だったのでしょうか?日本は戦争に負けたから被害者なのでしょうか?多くのアジアの国々・人々を巻き込んでおきながら,いまだにその反省からのけじめをつけていないと感じているのですが。
戦後生まれの私たちへ,少なくとも戦中・戦後を生きてこられた世代の方からの問題提起を期待しています。

お礼

戦争責任へのコメントありがとうございました。
仕事多忙でご返事おくれお詫びします。
「埴輪」に書いたように戦争は多くの罪ない人々にも多大な被害をもたらす行為なので、戦争を起こさないことが必要です。そのためにが外交が重要です。戦前の日本は外交力において不足していた部分が多々ありました。軍部の力が強くなりすぎたからです。戦争責任は東条英機首相など限られた人にあっただけでなく総合的にみると政党政治の弱体化と軍部の肥大化にあったとみるべきでしょう。
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