無責任な川内原発再稼働  小榑雅章

8月11日午前10時半、九州電力は、鹿児島県の川内原発1号機の原子炉を再稼働させた。
これに先立ち、安倍晋三首相は9日、長崎市で記者会見し、「何よりも安全を最優先させる。…福島の苛酷な事故を踏まえ、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合しない限り、原発の再稼働はさせない方針だ」と強調している。
これを聞くと、「川内原発は絶対安全だから、再稼働させた。だから安心しろ」ということになる。
ところが、肝心の原子力規制庁のホームページに記載されている新基準をみると、
「この新規制基準は原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのものです。しかし、これを満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではありません」
えっつ、安全性は確保されていないのかよ、そんなのありか、それなのに、安倍さんは、「何よりも安全を最優先させる」と明言しているじゃないか、まるで詐欺だよ。
もしも万一、大事故が起こったら、誰が責任取るのだろう。当然、安倍首相は責任とるのだろうな、と思ったら、原子力発電稼働の責任は九州電力だから、事故の責任も電力会社だという。おまけに避難の計画や実行は、各自治体が担うというのだ。えええっ、国立競技場とおなじで、責任が誰なのか全くわからない。これはもうめちゃくちゃ。
「事故は起こらない」ことを前提にしていた原発安全神話が、福島でもろくも潰えた時、原発を動かしている限り、事故は起こる、ということを国民は痛感した。だから原発再稼働には反対が圧倒的に多い。それでも、この国には、なぜか、原発にしがみつく集団がいる。よほど甘い蜜があるのだろう。どうしても原発を動かそうとさけんでベースロード電源とやらにしてしまった。
事故は起こることを前提にしなければならなくなって、万一の時に住民避難はどうする、なんとか対応せなあかん。緊急避難は災害対応だから、それは政府でも電力会社でもなく、自治体の仕事だということになった。大雨による土砂災害と原発過酷事故が一緒なのかいな。これがまかり通るとは、この国のいい加減さにあきれて悲しくなる。
福島で最も混乱したのが、住民の避難であった。どこにどうして逃げたらいいのか、誰もわからない。放射能は目にも見えない、匂いもしない、風向きによっても危険か安全かどんどん変わる。放射能が降り注ぐ中、住民はどのように迅速に避難したらよいというのか。それが市町村の役割だという。そんなこと出来るわけないじゃないか、返上するとなぜ言わないのだろう。小さな市町村にどれほどの能力と人力があるというのだ。
川内原発の地元である出水市は、原発から半径5~30キロ圏の緊急時防護措置準備区域(UPZ)に2万2000人が暮らす。いざというときには、屋内退避や避難、甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の服用などが求められる地域だ。
 南日本新聞によると、この出水市で開かれた住民説明会で、市の担当者は、伊佐市や霧島市など避難先への複数のルートを紹介。「放射性物質は五感で感じられない。不安だと思うが、冷静沈着に」と呼び掛けた。しかし住民から、「風で避難先へ放射性物質が流れたら、計画は役に立たない」と意見があった。そうしたら、県の職員は「避難先で汚染の数値が出た場合、新たな避難先を県で調整して提示する」と答えたという。何をのんびりしたことを言っているのか。そんな悠長な時間はない。
大体、大災害時には、県庁職員自身が被災者になることも多く、怪我をしたり道路が渋滞したりして登庁もままならない。阪神大震災の時には、職員も登庁できず、当日はがらんどうだった。県庁や市役所の建物も被災、一部損壊して、しばらく使い物にならなかった。
原発が破壊され、放射能がどんどん飛散しているような大事故の時には、県庁や市役所も被災し職員も大混乱だということを前提にしたほうがいい。そんな中、職員たちは無傷で整然と「新たな避難先を県で調整して提示する」などということができるはずがないのである。つまり避難計画などないに等しいのだ。
また、これも南日本新聞の記事(2015-06-30)からだが、「九州電力川内原発(薩摩川内市)の重大事故時に、要援護者や移動手段を持たない住民を避難輸送するバスや運転手を確保するため、鹿児島県は29日、県バス協会と原発から半径30キロ圏内の協会加盟事業者33社を相手に協定を結んだと発表した。」
鹿児島県は契約を結んだことで責任逃れのアリバイ作りにはなるだろうが、実際は絵に描いた餅だということは、誰にもわかる。
現に重大事故が起こっている。地域には放射能が降り注いでいるのだ。だから避難する必要がある。そんな危険なところへ、誰がバスを運転していくのか。契約は会社がするが、実際に現地に行くのは運転手だ。
これについて、8月11日の朝日新聞がつぎのように取り上げている。

自治体はバスなどで周辺住民を避難させる。しかし、被曝(ひばく)の恐れがある地域に、民間バスの運転手を強制的に向かわせる制度はない。11日に九州電力川内原発が再稼働する予定だが、住民の避難計画は運転手の善意が頼みだ。
福井県の関西電力美浜原発で事故が起き、放射性物質が外部に漏れ出た――。
 7月12日、こんな想定の防災訓練が滋賀県長浜市であった。滋賀県の長浜市と高島市は福井県内の原発の半径30キロ圏(緊急時防護措置準備区域=UPZ)にあり、圏内に約5万8千人が住む。
 訓練には住民503人が参加した。最寄りの小中学校や体育館に集まり、バス14台に分乗して県立長浜ドームまで避難した。
 2011年3月の福島第一原発の事故後、12年9月に原子力災害対策特別措置法が改正された。これを受け、原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針の中で、原発の半径30キロ圏の自治体は避難計画の策定を義務づけられた。
 長浜市と高島市の場合、原発事故が起きると住民はまず屋内に退避する。地上1メートルの高さで毎時20マイクロシーベルトを超える放射線が観測された場合、1週間以内に滋賀県内や大阪府、和歌山県に避難する計画だ。
 移動手段はバスが原則。自家用車だと渋滞や避難先の駐車場不足が懸念されるためだ。滋賀県は13年12月に県バス協会と協定を結んだ。県内の観光バス約500台を避難用にあて、住民をピストン輸送する計画を立てている。
 しかし、訓練でバスを運転した湖国バスの西沢正勝さん(52)は「放射線は目に見えない。安全か危険か現場で判断できない」と戸惑う。滋賀観光バスの馬場兼蔵・安全統括部長は「運転手に業務命令を出すのは難しい。勇気を持って行って来いとしか言えない」。滋賀県原子力防災室の入江建幸参事も「運転手の善意に頼るほかない」という。
 災害対策基本法86条は、災害時に知事が運送事業者に被災者の運送を要請できると規定している。要請に応じない場合は「指示」できると定めているが、「強い意思表示に過ぎない」(内閣府)。従わなくても罰則はない。
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