好きな言葉⑥) いい加減と良い加減   宇治敏彦

いい加減
 自分は結構、いい加減なところがあって、着るものには無頓着だし、部屋の整理などは苦手である。しかし、そんな側面が「神経質にならない」「細かいことにこだわらない」という良い加減(好い加減)にも繋がっているではないかと思う。たとえば趣味の木版画づくりでも、彫り間違えた個所は、ペン画や水彩画と違ってやり直しが効かないので、そのまま生かしておく。やり直しが出来ない人生に似ている。「心の師匠」でもある版画家・棟方志功が彫り違えた個所に拘ることなく、物凄いスピードでエネルギッシュに彫り進める映像を見たことがある。ミスを瞬時に「良い加減」で逆転させてしまったのである。
 12月1日、拙著「政の言葉から読み解く戦後70年」(新評論)に関連して日本記者クラブで「戦後70年の政治 ジャーナリストから見た評価と課題」というテーマで講演・記者会見をした。司会の橋本五郎氏(読売新聞)から「安倍政権は過大に特殊な政権とみられているが、小泉政権、中曽根政権の方がもっと特殊ではなかったか。安倍政権でハト派はいなくなったと嘆くのはいかがなものか」との質問を受けた。
 その瞬間、私の頭に去来したのは昭和30年代に取材していた内閣憲法調査会での論議のことであった。「神川彦松、大西邦敏といった憲法学者からは『自衛隊違憲論など現実に合わない『いい加減』な憲法だから、早急に憲法を現実に合わせるべきだという改憲論が主張された。彼らはドイツ法的な考えで条文と現実が一致しなければ気がすまないとの考えだった。一方、高柳賢三会長などは英米法的考え方で、大事なのは実態であり運用であるとの考えだった。確かに自衛隊の存在と憲法9条(戦争放棄)の間には開きがあるが、それを克服して平和主義を貫くという国家運営をしてきたからこそ日本の平和主義が中国や韓国などに理解されて『良い加減』につながったのではないか」「もし60年安保の時に岸首相が要請した自衛隊の出動が防衛庁からハイハイと受け入れられていたら社会的混乱はさらに拡大していただろう。防衛費の国内総生産(GNP)1%枠、非核3原則、国連平和維持活動(PKO)協力法など歴代政権の政策が軍拡に抑制的に展開されてきたからこそ『良い加減』になった」「安倍政権も憲法学者やマスコミなどの批判があるからこそ『良い加減』にとどまっていられるのであり、もっとマスコミに感謝してもいいのではないか」などと答えた。この時、最前列に座っていた浅野勝人氏(元官房副長官、NHK出身)が一人盛大に拍手してくれたのには驚いたが、傍聴に来てくれた複数の学友たちの反応も小生の見解を支持してくれるものであった。私にとっては、まさに「良い加減」であった。


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