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歴史的和解と「国際人」たる要件   宇治敏彦

11世紀半ばの1054年に教義の違いから分裂したキリスト教の「ローマ・カトリック教会」と「東方正教会」が歴史的和解へと踏み出した。ローマ・カトリック教会のトップであるフランシスコ・ローマ法王と東方正教会のリーダー、キリル総主教が2月12日、キューバの首都ハバナで会談し東西教会の「共同宣言」を発表した。
その骨子は①歴史的相違を克服するためのあらゆる行動を実施する②中東のキリスト教徒に対する迫害阻止へ国際社会が緊急行動をとるよう要求する③暴力やテロ行為の根絶を国際社会に訴える―など。キリスト教徒がイスラム教スンニ派過激組織IS(イスラム国)に迫害されている事態が両教会の和解を促した側面はあるが、同時に宗派対立を克服して、世界があらゆる面で「和解」を実現すべき時だとの基本認識が両宗派の指導者を動かしたと言える。両首脳の初会談の場所がキューバであったのも象徴的だ。キューバのラウロ・カストロ議長が仲介したと報じられているが、フランシスコ・ローマ法王は米国とキューバの国交回復を仲立ちした経緯もあり、それぞれにつながっている。さらに言えば、ロシアのプーチン大統領は過去に何回かバチカンを訪問してヨハネ・パウロ2世やフランシスコ法王と会見しており、いずれは法王がロシアを訪問するものとみられる。キリスト教の両協会と米ロ及びキューバの3か国が過去の恩讐を乗り越えて「歴史的和解」に動き出していることに日本は、もっと注目すべきではないか。
オバマ米大統領の任期は今年一杯。フィデル・カストロ前政権(現議長の兄)下の1961年、キューバは社会主義化し米国はキューバと断交した。その後、キューバ危機も起きて両国関係は悪化したままだったが、昨年54年ぶりに国交正常化を電撃的に発表した。オバマ大統領の最後の仕事は、キューバとの国交回復、両キリスト教会の歴史的和解を足場に「イスラム国」などの過激派テロをどこまで封じ込めるかにかかっている。
「長年の対立、葛藤を克服した歴史的和解」―この新しい潮流に私たちは、どう対応していくべきだろうか。安倍晋三内閣は中国、北朝鮮の軍事的脅威の増大に対抗して新安保法制の具体化や日米安保協力に積極的な姿勢を見せる一方、中韓両国との歴史認識問題、ロシアとの北方領土返還問題や平和条約締結問題といった未解決の懸案を抱えている。ここは一つ新たな視点で「歴史的和解」に取り組むべきだ。また私たち日本人も視野を広げて「真の国際人」になる努力をすべきであろう。最近、国際的に活躍しているスポーツ選手が目立つ。男子テニスの錦織圭(26歳)、スーパーラグビーの五郎丸歩(29歳)、スキージャンプの高梨沙羅(19歳)など。またノーベル賞の受賞者も毎年のように日本人がノミネートされる。このように国際的に一流とみられる日本人がいる一方で、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)のような人権侵害、差別的言動を続ける日本人もいる。拙著「政(まつりごと)の言葉から読み解く戦後70年」(新評論)にも書いたことだが、「半内半外」(ナショナリズムだけでなくヒューマニズムを重視する姿勢)の日本人を増やすことが「国際化」には重要な要素である。
Diversity(ダイバシティー、多様性)がキーワード。漢字、ひらがな、カタカナだけで十分に生活できた時代と違って、在日外国人が約1415万人、訪日観光客が1341万人余(いずれも2014年、法務省入管統計。政府観光局の統計では2015年の訪日外国人数は1973万人)という時代である。特に「爆買い」という言葉が流行語になった中国人観光客の急増などで日本を訪れる外国人は今後ますます増える。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが、その傾向を加速させる。「多様性」とは、具体的にどんなことを意味しているだろう。「新・観光立国論」(東洋経済新報社)を著したデービット・アトキンソン小西美術工芸社長(イギリス人)は「多様性」について新聞に、こう書いていた。
「日本は『おもてなし』の国と言われますが、外国人からみると、もてなし不足に見えます。たとえば、京都の龍安寺の石庭を訪れた時、外国人観光客が『ここはもともと、駐車場だったのかな』と話しているのを耳にして衝撃を受けました。『何度も来ているうちに、よさが分かってくる』と言われますが、解説してほしい人もいます。観光に一番大事なのは、多様性です。解説を求める人、不要な人。ガイドと回りたい人、体験を重んじる人。決めるのは観光客です。多様な客が来るのに、限られたメニューでは困ります」(2月18日 、朝日新聞朝刊)
日本人の間では当たり前と思っていることが外国人には新鮮に映ったり、不可解に思えたりする。「爆買い」で来日する中国人観光客も、買い物と富士山見物だけで満足する時代は、既に過ぎた。ある観光業者が中国人グループを府中競馬場に案内したら大変喜ばれたという。中国人は馬好きと言われるが、実際に間近で馬に接する機会は少なく、ましてや馬券を買って遊ぶという機会がないので競馬場訪問が大歓迎されたのだ。
他方、外国人が多く住む地域(大阪市生野区、長野県川上村、群馬県大泉町など)では「ゴミ出しのマナーが出来ない」「大衆浴場での入浴態度が悪い」など様々な生活慣習の違いで日本人とのトラブルを生んできた。お互いに「半内半外」で理解し合うヒューマニズムこそ「国際化」に不可欠な要素である。大は宗派対立から小はゴミ出しルールまで相互理解を深めて「歴史的和解」を促進していこう。
昨年は自爆テロの多発など世界中で「憎しみの連鎖現象」が目立った一年だった。しかし今年は東西キリスト教会の和解というビッグニュースを足場に世界が「多様性の容認」「ヒューマニズム優先」へ大きく動き出すことを期待したい。「我々は兄弟だ」。ローマ法王がキリル総主教に述べた一言に重みを感じる。
(この原稿は行政情報システム研究所発行の「行政&情報システム」4月号に掲載したものを手直ししました)
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