花森さんだったら、こう言うだろう「三菱自動車は悪い。しかし国はもっと悪い」   小榑雅章

三菱自動車は5月18日、燃費データ偽装の責任を取り、相川哲郎社長と中尾龍吾副社長が6月24日に辞任すると発表した。
三菱自動車は1月ほど前の4月20日に、国が定めた「惰行法」と呼ばれる測定方法を使わなかったというのだ。軽自動車の燃費テストで、燃費性能を故意に改ざんし、燃費を実態より良く見せていたと発表し、大騒ぎになっていた。開発段階から実際に車を走らせて得た実測値を使用せず、燃費が有利になる推定値を繰り返し使って燃費の目標を達成したと見なし、開発を続けていたことが分かった。
国土交通省は、実態解明を進めるため、三菱自動車本社に立ち入り検査を行う、と発表した。

新聞もテレビも、このニュースを当たり前のように報道しているが、なにかおかしくないか。
三菱自動車は悪い。当然だ。このままでは倒産もありうるというので、日産に救済合併してもらい、なんとか命脈を永らえている。社長も辞任するというのも、当然だろう。
だが、肝心なことが論じられていない。
国の責任だ。
国が定めた「惰行法」と呼ばれる測定方法を使わなかったから、わるいというのだ。三菱は、勝手に自分に都合のいいようにデータを改ざんした。自動車の燃費テストは、そんないい加減なものなのか。国は、テストの方法を規定し、実際のテストは各社の勝手に任せている。国はその結果をただ鵜呑みにして、承認しているというのは、そりゃなんだ。全くの性善説で、メーカーの言ってくることはすべて正しいと信じているだけではないか。
そして、この期に及んで、さも正義の味方みたいに、国土交通省は「実態解明を進めるため、三菱自動車本社に立ち入り検査を行う」というのだ。冗談ではない。国土交通省こそ、この不祥事の元凶であり、共同責任者だということを、新聞もマスコミももっと追究しなければならない。
いま、朝ドラの「とと姉ちゃん」は、暮しの手帖の創設者の一人、大橋鎭子さんがモデルだが、その暮しの手帖は商品テストで有名だ。東芝や日立や三菱、松下(ナショナル)などの洗濯機や冷蔵庫や掃除機の品質テストを毎号のように行い、その結果を誌上で実名あげて発表した。
消費者は、その結果を見てから購入銘柄を決めたので、メーカーは戦々恐々だった。
暮しの手帖のテストは、厳正だった。
第一に、テストする製品は、メーカーから提供されたものではない。全部自前で複数購入する。しかも、ディスカウントされた商品は買わない。正規のねだんで、販売店も1か所でなく数か所にわけて購入する。メーカーに、それはたまたま欠陥だったなどと、などと言われないためである。
テストは、すべて自分たち暮しの手帖のテスターが行う。メーカには一切無関係でテストする。あくまで客観的に公正な評価が必要だからだ。
しかもテストは、実際に即して行う。たとえば、ベビーカーのテストは、ランニングマシンのように動くベルトの上に置いて何キロ動かした、などというテストはしない。じっさいの道は、平らなベルトのような道ではない。アスファルトともあれば砂利道もある、平らな道も坂道も段差もある。いろいろな道を100キロ実際に押した。そうしたら、実にあちこち壊れた。平らなベルトの道を動かしても、こういうことは何も起こらない。洗濯機は、洗濯物を実際にセンタクして、布の傷み具合や汚れの落ち方を調べるのだ。トースターのテストでは、もちろん本物のパンを焼く。99号ではじっさいに四万三千八八枚ものパンを焼いてテストした。
どの場合も、メーカーとはまったく関係なく、暮しの手帖が独自に行う。
それが商品テストというものだ。
ところが、今回の国の燃費テストというのは何だ。
国はテストの方法だけを決めて、あとはメーカーが勝手にテストし、自分が勝手に都合のいい数字を作り、その数値を報告する。国はハイそうですか、と受理するだけだ。
こんなアホなことで、国は、自動車の性能を保証しているというのか。メーカーの言うことはすべて正しいと、思っているのか。そんなおめでたいことで、国民を、消費者を守っていると言えるのか。
暮しの手帖編集長の花森安治さんは、企業と商品テストについて、つぎのように言っている。
「ものを作ったり売ったりするのは、けっして慈善事業でもなければ、趣味道楽でもない。はっきりいってゼニをもうけるためである。私たちの暮しに役に立とうと立つまいと、売れるものなら何でも売るし、売れそうにないものでさえ、無理やりに売ってしまいもする、それで当りまえである。」
その上で「<商品テスト>は、はっきり商品名をあげて、よしあしを公表する。もし、そのテストが信頼されていたら、よいと判定された商品は売れるし、おすすめできないと言われた商品は、売れなくなる。/メーカーに主義主張はない。売れるものを作るだけである。よい商品を作れば売れる、となれば、一生けんめいよい商品を作る」(暮しの手帖100号1969年4月)
企業というのは、ゼニをもうけるためにものをつくっているのである。慈善事業でもなければ、趣味道楽でもないのだ。それを、性善説だ、企業はウソなどつかない、と床の間に構えていて、いうとおりにしないのが悪い、とお殿様のようにのたまわっているのだから、そんなおめでたいお殿様に税金で月給を払う必要はないのだ。無駄銭だ。
新聞にも、マスコミにも、なにが問題なのか、何が本当に悪いのかを見抜く力がないのか。
三菱自動車はもちろん悪いが、そんな三菱を自由にやらせている国の方がもっと悪いということを追及してくれなければ、ジャーナリストだとは言えない。


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