震災は日本人の人間性を向上させただろうか?   宇治 敏彦

 東日本大震災から3月11日で6年が経つ。東京電力福島第一原発の放射能漏れ事故も加わって、まだ故郷に帰れない人々も多い。政府は原発事故で避難指示を出した地域のうち福島県の浪江町、川俣町、飯館村については3月31日、富岡町については4月1日、それぞれ帰還困難区域を除き帰還を認めることになった。その一方、大熊町、双葉町では依然、解除の見通しが立っていない。チェルノブイリ原発事故跡地が依然、居住不能なのと同様に、東電原発事故がいかに日本人の暮らしに大きな被害を与えたかを改めて思い知らされる。
 しかし悪いのは東電だけではない。被災者やその関係者から補助金をむしり取ろうと目論む日本人が結構いることだ。なかでも純粋無垢と思われる子供たちの間で、そういう行為が「いじめ」として行われていた事実に接し、筆者は「日本人は進歩しているのだろうか?」と疑ってしまう。最近、東電原発事故で横浜市に避難した中学一年の男子生徒が「つらいことがあっても自殺を考えないでください」と全国のいじめ被害者に呼びかける手記を発表して話題になった。
 この少年は横浜に避難した小学六年生当時に仲間の生徒たちから「補助金ゆすり」のように合計150万円を脅し取られ、不登校に陥った。これを特殊例と言えないほどに各地で被災者いじめが行われてきた。
 また3月8日の中日新聞朝刊の記事によれば、日本に難民申請中のバングラデシユ人の男性2人が人材派遣会社を名乗る日本人から「福島第一原発事故の除染に従事すればビザが延長される」と嘘の説明を受けて、福島県飯館村で除染作業に携わっていたという。
 いじめ、詐欺、窃盗、婦女暴行などなど、さまざまな悪事が震災と原発事故を「絶好の舞台」にして行われてきたことを私たちは看過してはならない。こうした報道に接して私が思い出すのは6年前に「埴輪」同人の小榑雅章君と二人で震災直後の宮城県石巻市や福島県飯館村などを視察した時のことだ。飯館村の広報紙には「避難したいが、その間に農機具などが盗まれないようにするにはどうしたらよいのか」といった相談が寄せられているとの記事が載っていた。
 「地震、雷、火事、おやじ」。昔から「怖いもの」として口伝されてきたが、本当に怖いのは、災難を悪事のチャンスと捉える「精神の腐敗」ではないだろうか。「俺おれ詐欺」なども含めて、終戦直後の昭和20年代に比べたら、はるかに物質的に豊かになっているのに、子どもの世代も含めて精神的に腐敗していく素地が広がっているとしたら、日本の未来は決して明るくない。
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