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朝永振一郎さんと「ねこ」の話  小榑雅章

中学校のときに、尊敬する人は、という問いには、いつも朝永振一郎と書いた。
なぜかと問われると、答えにつまった。朝永振一郎という人が、何をしたのか、なぜえらいのか、ほとんど何も分らない。でも、湯川さんがノーベル賞をもらったのだから朝永さんももらってしかるべきだ、と新聞で読んで以来、そうだそうだと思い込み、なぜか湯川さんより朝永さんびいきになった。
その朝永先生にお目にかかることになった。1970年(昭和45年)の2月、暮しの手帖の原稿をお願いに武蔵境のお宅に伺った。その5年前にノーベル物理学賞を受賞されていて、当方はバンザイをさけび勝手に溜飲を下げていたのだが、目の前に憧れの先生があらわれると、緊張してしどろもどろになった。花森さんからは、絶対に原稿のOKをもらってくるように厳命されていた。何をどう言ったのかまったく覚えていないが、朝永先生はやさしかった。ずっと黙ってわけのわからない口上を聞いてくれて、根負けしたように「わかりました。書きましょう」と引き受けてくださった。
その原稿が、暮しの手帖2世紀6号に掲載された「ねこ」である。この原稿をもらってすぐに読んだときに、これは困ったと思った。朝永家の飼い猫が隣家の猫とけんかをし、双方怪我をしたりしていたが、両家の猫とも交通事故で死んでしまったという、たわいも無い話である。「これが朝永振一郎の原稿かっ。原稿の頼み方が悪い」と花森さんに叱られる。困ったなと持ち帰って、恐る恐る原稿を差し出した。一読した花森さんは、ニコッと笑って「傑作だ」と言った。そしてさらに、「朝永さんの人間の味が実に見事ににじみ出ている。これが天下のノーベル賞学者だ。いい原稿だね」
えっ、ほんとにこれでいいのですか、という声をのみこんだ。ノーベル賞とも物理学とも何の関係も無い<たわいも無い>猫の話ですよ、と思っていた私に、「朝永さんに連載したいから、毎号原稿をお願いしますと行って来い」と花森さんは言った。
それからがたいへんだった。(つづく)

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