政治ジャーナリストの自殺  宇治敏彦

 
NHK解説委員室副委員長の影山日出夫氏(56)がNHK放送センター内のトイレで首をつって自殺したというショッキングなニュースを避暑先のホテルで聞いて絶句した。「なぜ彼が」という疑問は今も解けない。小生が日本記者クラブの企画委員長をしていたとき、彼には企画委員として政治関係のゲスト招聘や党首討論会の司会あるいは代表質問役として大変助けてもらった。最近では「ゲストの政治家に対する影山氏の質問が段々鋭さを増している」と日本記者クラブの仲間内で話題になったことがあるものの、誠実な人柄から取材先からも好感を持たれていて特段に変わった様子は見られなかった。よほどの病気を抱えていたのであろうか。自ら命を絶つ決断をさせた原因は何であったのか。将来の解説委員長(主幹)を嘱望されていた人材だけに、他人にはうかがいしれない人間の深淵にある内心とのギャップにとまどうばかりだ。
影山氏が早稲田大学政治経済学部の内田満ゼミ出身であることを内田先生の追悼会で初めて知ったのは数年前のことである。内田ゼミは寺島実郎氏や江川紹子さんなど評論家やジャーナリストを多数輩出しており、派手さには欠けるが堅実な研究で知られた内田先生の教えがこうした人々にも反映している。影山氏もそういうタイプの政治記者だった。
NHKでは10数年前にもHという外交・安保問題専門の記者が不審死している。ビルから転落したのだが、自殺との見方も濃厚だった。政治記者では古くは共同通信のT記者、日経新聞のK記者など自裁した人たちがいるが、いずれもその真相は分からずじまいのままである。世間一般では「政治記者」というと、いかにも政治家気取りに肩で風を切って歩くような無神経な人間像を想像しがちだが、決してそうではない。かつて佐藤(栄作)派担当だった某全国紙の記者が池田勇人内閣の改造前夜に佐藤氏から「俺は入閣しない」と聞かされていたのに翌日、ふたをあけてみると科学技術庁長官となったのを見て「政治家は信用できない」と即座に丸坊主になって学芸部への異動を申し出た逸話も残っている。
影山氏は誰かに裏切られたのか、あるいは何かに絶望したことがあったのだろう。それが何かは分からないが、誠実な政治ジャーナリストを失ったのは大きな損失である。心から影山氏の冥福を祈りたい。
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